【田原真人】抑圧からの脱却。自分と向き合い続けた物理教師が説く、「正直」の重要性 (後編)


反転授業の研究・物理ネット予備校フィズヨビ・Zoom革命 代表など
田原 真人さん

 

前編では、今の日本社会には抑圧のメカニズムが多く存在しているという問題意識と、それに対して描く理想の社会。そして、自分に対して正直であることの重要性を話した。後編では、まずは正直な人を増やすために、田原さんはどのようなアクションをしているのか。そこから入ろうと思う。

-社会に向けた、より良い在り方の提案-

「まずは、いろんな場に関わっている。いろんな組織とかコミュニティとかで、身動きが取れなくなっちゃってるっていうところは多いと思ってるんですよ。トップダウンでやると、みんなどんどんエネルギーが疲弊していく。下の方にいけばいくほど辛くなってくる仕組みだから。
そうすると、アメとムチをたくさん使わないと、人が動かなくなってくるんだよね。でも、アメとムチにも限りがあるし、だんだん効かなくなってくるし、そうやってだんだん疲弊してくと、下からどんどん脱落していったりとか、病気になってったりとか、そうすると上の方も辛くなってくる。
そういう状況を変えるような画期的な在り方なんじゃないかなって思ってて、それを自分の中で再現可能な形にできるようになった時に、いろんな組織とかコミュニティとかに関わっていって、その在り方を変えてく。そういうやり方で、コミュニケーションの在り方をドミノ返しで変えていきたいし、その中で見つかってきたコアなノウハウは、どんどん共有して、自分以外の人も同じような形で、やっていけるようにして、それが横展開で広がっていけばいいなっていう風に思ってる。」

 

正直な人を増やすためには、組織やコミュニティの中から抑圧を取り除かなければいけない。組織やコミュニティの中から抑圧を取り除くには、コミュニケーションから抑圧のメカニズムを排除することが必要だと言う。そして今、副業やリモートワークなどが浸透していったりと、日本でも働き方がだんだんと変わっていっている最中だが、それも方向性が間違っているのではと田原さんは語る。

 

「リモートワークもトップダウン型だと、見てないとサボるんじゃないかと思って、監視カメラを付けてリモートワークするような開発を、日本の大手がしてたりとかするわけね。
そういう上からしようと思ってるマネージメントに、リモートワークを結びつけようとすると、監視だったりとかも考えなきゃいけないんだけど、そもそも自分たちが気持ちよく働ける状況だったら監視なんていらないわけ。」

 

抑圧によって動かされずに、人が自然に主体的に動くことができる環境ならば、監視は必要ないと言う。

 

「だからそういうところに、人と人とが結びついたり協力したりする、違うメカニズムがあるんだってことを提案して、いろんなところを変えてきたい。」

 

-レールを外れたからこそ見える世界-

とはいえ、まだ、ほとんどの日本の組織やコミュニティ及びコミュニケーションにおいて、抑圧のメカニズムは働いている。抑圧のある関係では、自分に正直でいることはすごく難しい。だから、ほとんどの場合、自分に正直でいるためには、少しでもレールから外れなくてはならない。田原さんは、大学院中退したときから、レールを外れていると自身で言う。そこに恐怖はあったのだろうか。

「親の理想像になることが自分の人生の目的って思ってたから、それを何とかして達成しようって思ってて、外れてもなんとかそこに戻れないかなって何年間も思ってたんだと思うんだよね。
でも、それが現実的にできなくなってった時に、自分を受け入れるっていうプロセスがあった。レールから外れてしばらくすると、外れる前には見えなかった外れることによって見えてくるメリットみたいなのがだんだん蓄積されてくる。だから、自分の人生は、こうやって新たに獲得したメリットを活かしながらやっていく人生なんだなっていう風にだんだん思ってきた。オフロード走行で生きている人も今までは見えなかったけど、自分がオフロード走行になると意外といっぱいいるなぁって気づくようになるし。」

 

レールを外れたからこそ見えたものがあるという。しかし、田原さんは、自分で選択した気があまりしないと語る。

 

「自分の人生はそういう人生なんだなってことかな。なんかさ、自分で決断しているようでそんなに自分の決断じゃなかったりするじゃない。そうなってくしかないなぁみたいなね。社会が変化していくわけだから、その中でこういくしかないって感じで、たくさんの選択肢の中から好きなものを選んでるっていうよりは、次々に分岐点を突きつけられて、こっち行くしかないよなって車で道路走ってるみたいな感じ。」

 

自分がこういう人間だとわかっていて、そこに正直でいると、進むべき道は一つしかなくなってくる。そこに嘘をつけば選択肢は広がるが、それは自分ではない。あくまで自然体で。自然体で進んで行くと自然に道ができる。

-能動的でも受動的でもない新しい進み方-

「目標はあんまり持たない。目標にそんなに意味がないような気がしていて、1.2ヶ月ごとにやるべきことが自然とやってくるわけよ。自分の中からこれやったほうがいいなって思ったりとか、依頼されたりとか。で、やると扉がパタパタパタってたくさん開く、そうすると1.2ヶ月前には見えてなかった世界が見えてきて、その自分がまた考えてるわけよね。そのループを繰り返すと違う自分になる。じゃあ、前の自分が立ててた目標なんてもう意味ないじゃん。だって変わってっちゃうんだもん自分が。
目標を持つっていうより、道を間違えずにかな。ある意味目標があると、今ここに流れが来てるのに、それ目標と違うからって流れを掴まずにいちゃう気がする。そうすると、目標にこだわるデメリットの方がおっきいなっていう風に感じちゃって。それよりは、流れをちゃんと自然体で受けとめて、その流れに沿っていったほうが、いい流れに乗れて、長い目で見ると、進みたかった方向に進んでいけそうな気がするわけ。」

 

自分というものは、常に変化していく存在。それは、自分の芯が弱いというわけではなく、視野が広がったりといったような感じだ。

 

「へぇー自分の人生ってそういくんだぁっていう感じで見てる自分もいる。だから能動的でも受動的でもないんだよね。そういう在り方とか進み方っていうのがきっとあるんだろうな。」

 

流れるように自然体で生きていく。

それは”感じる”というところから始まっていると言う。

 

「感じるっていうのは、ものすごい計算をやってるはずなのよ。ここ良さそうだなぁとかこっちいい感じっていうのは、今までの経験だったり、もういろんな情報、覚えてないことも含めた、すごいことを計算した結果感じてると思う。
で、それに基づいて良さそうな方に進むんだけど、感じることを抑圧しちゃうとさ、どっち進んだらいいかわかんなくなっちゃうから、なんか合理的に有利な方っていうものを、選択せざるを得なくなっちゃう。」

 

合理的に有利な方。特に顕著なのは、大学受験だろう。自分との繋がりが遮断されているがゆえに、多くの人が少しでも高い学歴を求める。

 

「ほんとはみんなすごいポテンシャルを内側に秘めていて、そのことを気が付かないようにされてる気がするな。抑圧が外れて自分と繋がるだけで、すごいエネルギーがみんな出てくるはずだって思ってる。」

 

抑圧が外れ、各個人がポテンシャルを発揮し、それが相互作用しあう社会になったとき、精神的側面でも物質的側面でも、より幸福な社会になっているのだろう。

 

                                                                                                                                 <終>

                                                                                                                 取材・テキスト/村上鴻

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詳細はこちら 

 

田原 真人 公式ブログ http://masatotahara.com/

反転授業の研究 http://flipped-class.net/wp/

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